日本国内におけるガン・カモ類の調査

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EAAFPガン・カモ類作業部会コーディネーター 牛山克己

コクガン調査の様子 ©藤井薫

日本国内では、環境省の主導で2つのガン・カモ類調査が行われています。ガンカモ類の生息調査とモニタリング1000ガンカモ類調査です。ガンカモ類の生息調査は1972年から、毎年1月中旬に行われており、広い範囲の越冬地を網羅しています。モニタリング1000はさまざまな生態系を継続的に調査するもので、ガン・カモ類は、越冬地、中継地を含む80箇所で調査されています。どちらの調査も、日本国内におけるガン・カモ類の概要を把握するのに大変役立っています。しかし、いくつかの種については、その分布や個体数の季節的な動向の詳細を把握するのには十分ではありません。

そのような弱点を補完するためボランティアによって行われているマガンとコクガンの調査について、それぞれのコーディネーターに、紹介記事を書いていただきました。このような調査が、今後フライウェイ全体に広がっていくことを期待しています。

 

1) 日本国内におけるマガンの一斉調査

公益財団法人宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団 嶋田哲郎

この調査は、国内のマガンの季節的および地域的な移動について調べるため、2003年から2004年の冬に始められました。毎年10月から4月にかけて、日本各地のマガンの越冬地や中継地で、ボランティアが一ヶ月に2回、マガンを中心にガン類の個体数を数えます。

日本におけるマガンの数は増えています。2015/16シーズンには、マガンの数は19万から20万羽確認されました。日本で越冬するマガンの個体数の90%以上が、宮城県北部にある越冬地を利用しています。2015年から2016年の冬はとても暖かく、2016年1月上旬には4万羽ほどのマガンが、秋田県内にある春の渡りの中継地に渡来しました。もう、雪が融けていたのです。しかし気候がまた厳しくなり、マガンたちは越冬地に戻っていき、その後2月初旬に通常どおり渡りを始めました。

このように、全国的な継続的調査は、国内のガンの個体数の動向や、気候変動と地域移動について把握するのに大変役立ちます。同様の調査が東アジアに広がれば、マガンの東アジア全体での季節的・地域的な動向についての理解が進むでしょう。

マガン調査の様子 © 嶋田哲郎

朝日に飛び立つマガンの群れ ©嶋田哲郎

2) 東アジアに渡来するコクガンの生息現況調査

道東コクガンネットワーク事務局 藤井薫

日本におけるコクガンの調査は、これまで秋季のコクガンの渡来地である北海道東部や越冬地の北海道南部、本州北部の一部で限定的な調査は実施されていましたが、より広範囲で継続的な調査は実施されていませんでした。そのような状況の中で、2014年の日露の鳥類研究者の交流を契機に、日本・東アジアに渡来するコクガンの渡来数と越冬地での個体数、渡りのルートなどの解明を目的に、北海道東部のコクガンの研究者が集まり、日露共同での本格的なコクガンの生息現況調査が始まりました。

湖面を飛ぶコクガン ©藤井薫

この調査は、秋季(11月)、冬季(1月)、春季(4月)の3回行われ、今年度で2シーズン目を迎えましたが、大きな成果としては2015/16シーズンの秋季調査では北海道東部の野付湾 [EAAF116] を中心に8,602羽を記録し、日本国内で記録されたコクガンの最高羽数を更新しました。しかしながら、越冬数についてはこれまで最大でも2千羽程しか日本国内では記録されず、韓国・中国南部への移動も含めてまだ東アジアに渡来するコクガンの越冬の状況は解明されていません。また、東アジアに渡来するコクガンの渡りのルートや繁殖地の解明も、大きな課題となっています。

今後も継続的なコクガンの調査を通じて、日本・東アジアに渡来するコクガンの生態解明に寄与できればと考えています。

 

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